2015年7月4日土曜日

サイの角

5月展示のキャプション公開振り返り。
展示のときのキャプションに、若干手を加えております。


動物を作るとき、事前に必ずその生態や特徴、今置かれている状況を調べます。
5月の展示で作ったものの中で一番凄惨な状況にある動物がシロサイでした。
でも、その作品も良いお宅に縁付き、特注額まで作ってもらって本当に良かった(T_T)
厳しい現実を抱えたサイですが、調べてみると実に長い歴史のある動物でした。

ってことで、本日はシロサイの振り返り。






【シロサイ/Ceratotherium simum】
奇蹄(ウマ)目 > サイ科 > シロサイ属
体 長 : 約350400cm
分 布 : アフリカ大陸南部

サイは、数頭の小さな群れをつくりサバンナで穏やかな草食生活をしている動物だ。縄張り意識は強いが、性格はおとなしく角突きあうような激しい争いはめったにない。その角は昔から漢方薬として珍重されており、薬効に根拠がないにもかかわらず、いまだに乱獲されている。保護動物違法取引条約に未参加のベトナム経由で金やプラチナよりも高値取引されるため、密猟は増える一方。近年では、アフリカの内乱で生活の場を失うことも、個体数激減要因の一つだ。

アフリカのサイは、大別するとクロサイとシロサイに分かれ、どちらのオス、メスともに顔面に2本の角をもつ。「シロサイ」とはいっても白くはないし、「クロサイ」といっても黒くはない。ともに乾いたダークグレーの肌なのに、なぜ「シロ」と「クロ」に分類されたのか?
シロサイは、唇が低い位置で横一文字に長く平たく、下部の広がった台形型の顔をしている。地面の植物をもれなく食べやすい刈り込み式の構造だ。一方、クロサイの口は幅が狭く、チューと口をすぼめて前に出しやすい形状。樹上から垂れ下がる植物をくわえやすくなっている。
この形状の違いを、昔の動物学者が「一方のサイの口、wideネ」と電信連絡したときに、受け手が「white」と聞き違えてしまう。一方を「白」と定義してしまったために、もう片方を便宜上「黒」にしたというお粗末な分類。色には全く関係ない。お役所にありがちな面倒な間違いに起因している。

今では、乱獲と内乱で激減したサイだが、大昔はアジアでも生活圏で普通に目にするほど広域に生息していたようだ。
仏陀の言葉に「サイの角のようにただ独り歩め」というものがある。
「~疑念を除き去って、サイの角のようにただ独り歩め」
「~真実を語り、サイの角のようにただ独り歩め」
「~すべて拾てて、サイの角のようにただ独り歩め」
当時、仏陀が誰でもわかりやすい例としてサイを取り上げた説法で、75回も繰り返されるこのフレーズには、読んでいると軽いトランス感を覚える。仏陀の示した「サイの角」とは、常に自分の前にあり、進むべき方向を示す指針。たった一つのまっすぐで揺るぎない強い信念を意味するといわれている。
ただ一つの信念。そう、インドにいるサイの角は1本だけだ。


hiroko Inagaki art work

0 件のコメント:

コメントを投稿